【シリーズ企画】こどもの輝き 詳細
2006.09.15
2.金田一清子さんのさわやか実践(2)
生きているってすばらしい
二年 うめ本 しん一
「ぼくは海くんちのテーブル」という本を読んだ。
海くんて
ほいく園のときのじこで、
死にそうになったんだって。
でも、たすかったんだ。
家ぞくもすごいけど、
海くんもすごい。
まるで家ぞくの心が
がったいして
一つの心になったみたいだ。
海くんは目をあけたまま
じっとねてるだけで
何もできない。
家ぞくは外へつれだして、
海くんの元気を
とりもどそうとしたんだ。
でも、家ぞくや友だちの
力だけではだめなんだ。
自分も
もっと生きようとする力を
出さなきゃいけないんだ。
生きているってすばらしい。海くんは、こういうことを
ぼくに教えてくれたんだ。
いじめ、自殺、次々とおこる悲しい事件...。そして戦争。この世の中でたった一つしかない、かけがえのない命が、あまりにも軽くもてあそばれている現実を想う時、子どもたちと一緒に命の大切さ、生きることのすばらしさを考えあうことがとても重要なことであると考えました。
「道徳の地区公開講座」と称して、全学級が道徳の授業を公開することになりました。どうせやらなくてはならないことなので、この機会を子どもたちにとって意義あるものに...と、教材研究に取り組みました。ちょうど、その頃、新聞の広告欄で目にしたのが「ぼくは海くんちのテーブル」という本でした。(西原敬治 文・福田岩緒 絵・新日本出版社)
さっそくコンビニに飛び込み、重要な場面を大判のカラーコピーにして、何枚かのパネルにしました。
当日は、話が進むうち、涙する女の子や、お母さんたちの中には、ハンカチを手にする人もいたほど。感動を呼び起こす内容でした。
最後のページの「ぼくは、くすりや機械の力でむりやり生かされているんじゃないよ。家族のみんなと楽しいことをいっぱいしたいから、こうして生きているんだよ」というメッセージと、作者であり海くんの父親である西原さんのみなさんへの「あとがき」のなかから、「この子は、きみと同じように喜んだり悲しんだりしながら、充実した毎日を送っているんだよ」というメッセージを取り上げて話し合いました。
子どもたちは、「重い障害をおった海くんが家族とともに力強く生きている...。しかも現在もたくましく行き続けている」という事実を知り、いたく感動し、自分の現在おかれている環境とひきくらべて、討論も盛り上がりました。
最後に感想を書いて発表してもらったのですが、なかなか時間がとれず、子どもたちは不服そうでした。「ちゃんと時間をとってゆっくり考えて書きたい!」という要望をもとに、後日時間をとって書いてもらいました。
その時、「詩にしてもいいですか?」と読書感想詩にまとめたのが梅本くんです。ふだんはおとなしく、内面には秘めたものをいっぱいもっている男の子です。「生きているってすばらしい」という題名にも驚かされましたが、あの授業の感動を、そして自分の想いを自分の言葉でまとめ上げているところがすばらしく、地域の詩集「多摩子ども詩集」に応募したところ、見事入選。
「ぼくは詩は苦手...」と自信のなさそうな顔をしていた梅本君でしたが、この詩で一躍脚光を浴びました。
後で「この詩に曲をつけさせてください」と、地域で医療にかかわりながら音楽を愛するボランティアの人たちの申し出があり、すてきな曲がつけられてCD が送られてきました。梅本くんはもちろんのこと、学級の愛唱歌ともなりました。学級のまとめの会で、一人で楽しそうに歌う梅本くんの生き生きとした姿が今でも忘れられません。
寝たきりの海くんと、家族のたくましい生き方は、子どもたちの心にすばらしいメッセージを届け、生きる希望を与えてくれたのです。
