【シリーズ企画】子どもとともに 詳細
2008.10.25
子どもとともに... 教育実践シリーズ(6)
異動して三年生の担任になる。始業式では、一番前に立っている子がK君である。これまで、ADHDということで、かなり手こずらせたらしい。顔つきもわんぱくそうである。始業式解散後に、「おれは、そろばんができるんだ」と、側に近寄って話しかけてくる。「君が、K君か。君のことは、聞いているよ」とこちらも言いたい衝動に駆られるが、「それはすごい」と対応する。
次の日からは、K君にぶたれた、押された、蹴られたと、次から次へと女子も男子も来る。暴力が日常化している実態が見えてくる。「ばか、死ね、消えろ」の言葉の暴力も、気にくわないと思った瞬間、相手に突き刺す。トラブルが起こるたびに、K君と相手の子を呼んで、謝らせるが、毎回「ごめんよ」と違う方向を見ながら、捨てゼリフのように吐く。相手の子も決まり切ったように、「いいよ」と言う。私は態度に注文をつけたいがK君とのつながりを保ちながら今は、呼んだら来るということだけで、十分だと感じる。
学級には、不登校の子もいる。学級作りに課題は色々あるが、二十八名という少なさがせめてもの幸いである。K君は、賢い子である。給食は、薬の副作用でほとんど食べられない。
着任した学校は、普通の学校の倍以上とも思える課題を抱えた子たちがいる。廊下に出る子。トイレに逃げ込む子。物に当たる子。特別支援体制は整っているものの管理職も含めて教職員が年中走り回っている。親からの相談も多く、朝でも夜でも、休みの日にも平気で電話がかかってくる。高学歴な富裕層と貧困の家庭が同居しているような地域である。
ある朝あいさつの声の弱さが気になり、「もう少し大きな声であいさつをしたら」と言った瞬間、「てめえがいるからイライラさせんだよ」と、K君からの声が飛ぶ。
水泳の学習で、ADHDの子にとって、薬がどれほど重要であるのかを、見ることになる。当日、初めて家庭で薬を飲んでこなかったために、プールで片っ端から友だちを蹴っている。しまいには、友だちを沈めることまですることになる。そのような中でも、授業中の脱線話やそろばんを利用した意欲の評価などが、功を奏し、学級集団の中に少しずつ溶け込んでいく。
二学期には、班長に立候補するようになる。しかし、全員から「暴力をふるうし、自分勝手だから無理」と降ろされ、全員の前で「どうしてだめなんだ」と泣くことになる。まだ、いざこざはなくならないが、寄り添ってあげたいと思う。今は、学級で大ブレーク中のけん玉にはまって、「見てください」としつこく、寄ってくる毎日である。
(小学校教諭)
