【シリーズ企画】子どもとともに 詳細
2008.11.10
子どもとともに... 教育実践シリーズ(7)
十月終わり、「はげ、はげ、しらがのこ、まんまるおなかのおじいさん」、ポニョの替え歌を廊下に響かせて、掃除している五年生の武。それに、同調して歌いながら教室の雑巾がけをしている子どもたち。自校方式のおいしい給食を残さず食べ切り、はじけて元気な知的発達障害児学級の子どもたち。担任の私は、孫が二人、髪の毛はほとんど白、禿っぽくなってきている。だから、子どもたちに、「ほら、おじいさんに負けるな」と、励ます。「おじいちゃん、あのね」「ツルピカ!聴いてよ」「おい、○○(呼び捨て)。俺んちのそばで事故があったんだぜ」「お父さん、あ、先生」と、子どもたちが私に話しかける。私は、授業や必要な指導時間以外は「権威」のない担任である。
八月終わり、武の父親は出張先で四十二歳の若さで急死した。そのことを朝の会でみんなに伝える。「かわいそうだね」「俺んちのお父さんも事故で死んだんだよ。おれと同じだ」と、同情する子どもたち。
一連の葬儀が終わって登校してきた武は、「ぼくが、おとうさん、おとうさん、とよんでも、へんじがありませんでした。おとうさんは、しんでしまいました。おかあさんがなきました。ぼくは、おかあさん、なかないで、ぼくがいるから」と、日記に書いてきた。みんなの前で日記を読んでもらった。
「僕のお父さんね、飛んできたごきぶりにキャー!って言ったんだよ。先生は、怖くない?」とお父さんと私を比較する。時々、「お父さん、あ、違った、先生ね、こおろぎは羽を震わせて音を出すんだよ」と、話しかけてくる。
算数で学習場面を固定し、絵カード、立体タイル、紙タイル、ワークシートを使い、掛け算を学び合った。隣の子どもの様子をカンニングし、「何だ、そうすれば良いのか」と、ヒントを得る子、みんなでわいわいしながら学び合う。わかった子がミニ先生に。「愛さん、こうすれば答えが出るんだよ。わかった?」と、武。「なんだ、掛け算って簡単。この図が描ければ答えが出る。おれ、算数が得意みたいだ」と、誇らしげに言う。
道徳で「大人になったら何したい?」に、「ぼくは、おとなになったら、しっかりはたらきます。ぼいんのひととけっこんして、こどもをたくさんさずかりたいです。なかよくくらしたいです」と書く武。
元気な子どもたちは、たくさん関わりあって、トラブルを起こして、人との関係を学んでいる。私は、「子どものけんかに大人は口を出さない」と思いながら、子どもたちの仲を取り持ち、わかってできる力を育みたいと、「普通」の教育を楽しむ毎日である。
(障害児学級担任)
